特集企画

独自の工法で編み出す“和”テイストの切り絵師:青木文明

LINEでシェア 2019/03/13

鹿児島県いちき串木野市を拠点とし、「和」をテーマに、独自で編み出した工法、そして今までにない切り絵のスタイルで活動されている『Atelier 武蒼』切絵師/青木文明さんに、切り絵との出会いからライフスタイルまでお伺いしました。

Q. 切り絵を始められたきっかけを教えてください。

青木文明さん(以下青木)
妹の結婚式で、元々何か作ったりするのが得意だったから「ウエルカムボード作って」と頼まれて。「いいよー」と答えていたんですけど、その間に事故に遭って、右手を負傷して。
でもこういうことになったからといって「作れない」という考えにはならずに、逆にこの手で何ができるかなと色々考えた時に辿り着いたのが切り絵だった。それで切り絵でウエルカムボードを作ったのがはじまりです。

Q. なるほど。それがどのようにお仕事として確立されたのでしょうか?

青木
それで、ずっとその作業工程を写真に撮ってたんです。妹の結婚式まではずっと切り絵をやっていたから、やることがあってよかったんですけど、いざその結婚式が終わってみると、やることがなくなって。「何しよう?」ってなって。この作業工程を撮った写真をどこかで伝えたいなと思ったんです。それでfacebookのページを作って、1から作業工程の写真をアップしていって。完成したら、このページは「お付き合いありがとうございました!」で終わらせるつもりだったんですけど、終わりそうになった時に全然知らない人から「結婚式をするんですけど、和装だから、こういうウエルカムボードないかなって探してたんです!」って連絡がきたんです。「え、いいんですか、僕なんかで」っていう感じでした(笑)。まさかそうやって仕事になるとも思ってないし。それで実際に作るってなって、「せっかくこのページを作ったからこのページでも紹介させてもらっていいですか?」のずっと繰り返しで。お仕事として始まったきっかけはfacebookですね。

ある程度インターネット上で、コンスタントに注文が入ってくるようになったので、Uターンを決めて、地元に帰って来ました。もの作りするのにはやっぱり田舎のほうがいい。せかせかしていると作りたいものも作れないし、都会は誘惑も多いですし(笑)

Q. 現在のお仕事もインターネットからの依頼が主となるのでしょうか?

青木
そうですね、ネット。あと最近は知ってくださっている方も多いので、鹿児島の方は直接来られて頼む方もいらっしゃいますし、今まで結構な数を作って来たので、結婚式場で実際にそれを見て「自分たちが結婚式するときも作ってもらいたい」という想いを温めてて、結婚が決まった時に「実は◯◯の結婚式の時に見たんですけど」みたいな依頼も多いです。

Q. やはり和装での結婚式に合わせたご依頼が多いのですね。

青木
はい。チャペルのHappyweddingみたいなウエルカムボードを切り絵で作ってる人たちは他にたくさんいるんです。なので和装の方から「寿とか和の書体を使ったのがなかなかないので探してました!」と言っていただいて。

Q. 「和」テイストが持ち味として確立されていますよね。

青木
そうですね。「可愛いのも作れるんですか」とかも結構くるんですけど、「それは多分もっとすごいの作れる方達が他にいらっしゃるんで、それはそちらに頼んだ方がいいかもしれないです」って正直に伝えます。「和」は感覚でなんとなく分かるんですけどね。

Q. 依頼がきてからの作業はどのように進められていますか?

青木
下絵を描いて、下絵を切り抜いていって。大体の人達の切り絵は、切り終えたところで終わりだと思うんですけど、僕の場合はそこから色を入れてカラフルにしていくのが1つ特徴というか、手間というか。 色入れをすると、その人の雰囲気というか個性が出るので面白いです。教室でやっていても、はじめはみんな同じ下絵だけど、完成したら全然違うものになったりするから。色の使い方はその人の感性がでる。

Q. 下に紙を貼って、色を付けていかれるのですね。

青木
そうです。裏からいれたいところと同じ形に切り出して、またそれを貼っての繰り返し。ずっと描いて切ってしかしてないです(笑)

Q. どのような紙を使用されているのですか?

青木
お菓子に付いている包装紙とかも使いますし、ほとんどは画用紙ですけど。和紙も使いますね。

Q. 紙によっても切れ味は異なるものなのでしょうか。

青木
違いますよ。やっぱり和紙は繊維が重なったりしてるから引っ張るんですよね。だから切りにくかったりも。

Q. 技術的なところはどこかで学ばれたのですか?

青木
いや特に。そういうのはしてないんですけど。

Q. それでいきなり世に作品が知られるのはすごいですね。

青木
驚きました。でもデザインというか‥仲間内の着るTシャツをデザインしたりだとか、居酒屋のロゴを作ったりはしていました。それは完全に趣味ですけどね、遊びで。

Q. なるほど。では元々物作りは好きだったのですね。

青木
そうですね。元々は飲食の仕事を志していました。学生の時に福岡で飲食に出会って。もう飲食の仕事で生きていこうと思った時に、東京の飲食の世界も見てみたいと思って上京しました。それで結婚して子供もできた時に、逆転の暮らしは良くないなと思って。昼の仕事をしないとと思って、知人の運送会社に入れてもらったんです。そしたら仕事中に右手を負傷してしまって。

正直、飲食の仕事に未練タラタラです(笑)。いつか店持ちたいと思っています。

Q. お客様から依頼がきて、デザインはどのように考えられているのですか?

青木
デザインはある程度依頼が来るのって決まっていて。結婚式のウエルカムボードがもうほとんどメインで。他には結婚祝いで友人に渡すとか、店舗の開店祝い、周年祝い、お孫さん・子供の命名、あと‥還暦祝い。節目、節目の、とかですね。

Q. 依頼に合わせてデザインもその都度、立案されるのですか?

青木
同じものは一つも作ったことない。要望はあれば、1つや2つ聞くくらい。仕事にしようと決意した時に、お客さんからお金をいただくから、「要望があればなんでも言ってください。できるだけやりますよ」っていうスタイルを1度だけとったんです。だけど、「なんでこれとこれを合わせるんだろう」とか、「これも入れなくていいのに‥」までなって。これってずっと単調作業じゃないですか、全然気が乗って来なくって。だから要望は1つか2つにしてもらって、用途によってデザインするようなスタイルをとってます。今年は鹿児島マラソンのTシャツも作らせてもらって。山形屋さんのなんですが、いいのができました。

Q. 切り絵やデザインを作られる上で、気をつけていることやポリシーはありますか?

青木
あるかなぁ‥‥ない(笑)。下絵も依頼が入ってからずーっとどんな作品にしようというところを、頭の中で考えるんです。下絵が9割くらいくらい頭の中で完成しないと描きはじめない。だからもう描きはじめたら半日くらいで、大きい作品も描き出す感じなんですよね。

Q. 頭の中で作られるタイプなのですね。

青木
だから切りながらも別の作品を考えたりします。

Q. 頭と手が別で作業を進めていく感じですか?

青木
そんな感じです。自分の中にスタッフが何人もいるみたいな(笑)

Q. 所要時間はどれくらいかかるものですか?

青木
四つ切りサイズっていうのが一番多いんですけど。単純にそれだけだったら、下絵から入っても朝〜17時までくらいの作業で、ハマれば一週間くらいで終える感じかな。でもやっぱり教室で出てたりとか、打ち合わせに入ってたりとかして。他の作品も同時に進めたりすると、1作品1ヶ月半〜2ヶ月くらいかけて仕上がりますかね。

Q. 切り絵をはじめられて今どれくらいになられましたか?

青木
今5年です。

Q. 5年の間にどのくらいの数作られたのでしょうか。

青木
170くらいかな。150枚くらいは下絵があるんですよ。それプラスアルファあるんで。

Q. 下絵も保存されているのですか?

青木
保存というか置いてるだけですけど。そんなかっこよく私の足跡はみたいな感じでは置いてないです(笑)

Q. 道具へのこだわりがありましたら、教えていただきたいです。

青木
これ200円くらいでどこでも売ってるカッターなんですよ。初めて持ったのがこれだったんですね。

途中一度、なんかかっこいいカッターを持ってた方がいいかなと思って、職人さんぽく、漆のかっこいいのを買ってやってみたんですけど(笑)、全然手にフィットしなくって。結局これです。

だから生徒さんたちも道具のせいにはできないですよね。「先生と道具が違うからこんなに切れないんだ」って。同じもんですもん、使ってるの(笑)

Q. 切り方なのでしょうか?道具というよりは。

青木
もう切る回数でしょう。どれだけ切ってきたか。切るのはある程度切っていたら誰でも上手になりますよ。僕なんか5年くらい毎日のように切ってるから、そりゃもう上手ですよ。

Q. 経験値なんですね!力加減とか、手に染み付いているのでしょうか。

青木
やっぱり手の大きさでも、人それぞれ刃の角度、ねかし方が違うだろうから、そこをある程度自分で切って見つけてもらってから楽しくなるんですよ。だから生徒さんには、そこまで「まぁ続けて、楽しくなるから!」って。あとは切れるようになってからどこで差をつけるかって言ったら、色使い、組み合わせ方かな。

Q. 1番時間がかかる工程はどこになるのでしょうか?

青木
描き出す前からもう頭の中で始まってるので、それなのかなぁと思う。描き出したら、色を入れも、もう今まで作ってきた中で、ある程度色入れのパターンって頭の中に入っているので、何手か先まで自分で考えられるようになってて。工程自体大変ですけど、苦ではないですね。

Q. 好きだからですね。

青木
うん‥ほんと良いのかなって思うくらい!好きなことやって。仕事にして、飯食って、上司もいなけりゃ部下もいなくて(笑) こんな空間の中で1日中やって。

Q. 幸せですよね。

青木
ほんと。。

Q. fB、instagramで一躍注目を集めることになった青木さんですが、現在もこの2つのSNSを利用して発信されているのでしょうか。

青木
twitterも一応作ってはあるんですけど、あげてないですね。出遅れたからかな、使いこなせなくて。結構instgramにあげる写真の撮り方とかはよく見えるようには気をつけてますね。そこでいいなと思ってもらわないことには、、そこが第1歩ですからね。だからなんでもかんでもあげるんじゃなくて、とにかく取りまくってるから、そこから厳選して。

Q. 講師も勤められていますよね。

青木
南日本新聞のリビングカルチャークラブそこの講師をしているんですけど、2週間に1回。

第2、4木曜の13:30~15:00と19~20時半でやっています。10人ぐらいずつですね。

Q. 教室で生徒さん達はどのようなことを学ばれているのでしょうか。

青木
1回目の教室では1クール6回で、基本的な切り方を全て教えます。切り絵に興味を持って、次も通ってくださる方達は「七福神」の切り絵をしています。1回の教室で1つずつ。女性が多いです。主婦、夜は仕事終わりの方とか。二週間に1度無になる時間というか。黙々とみなさん切ってます。。

Q. 青木さんには2人のお子さんもいらっしゃいますよね。

青木
はい。子供2人います。アトリエ武蒼の屋号が長男の名前は武蔵で次男が蒼士なんです。その頭文字をとって。fbのページ名を何にしようかなって考えた時に、子供たちの頭文字をとって「アトリエ武蒼」。それがそのまま屋号になりました。

Q. お子さん達も切り絵に興味を持たれていますか?

青木
子供達もやりますよ。簡単な動物のシルエットを切ったりとか。夏は夏休み限定の教室とかもしていて。子供達はそこで作った作品を学校の課題として持って行ったり。

Q. お子さん達が継承される可能性もありますよね。

青木
いや(笑)。まぁでもあとが継げるくらいの土台をまず作っておかないとですからね。

Q. (アトリエ内はアウトドア用品もチラホラ‥)アウトドアはよくされるのでしょうか。

青木
そうですね。色々遊びに行ったりもしますけど。息子たちがサッカーをはじめてしまって、最近は土日試合ばかりで少し寂しいです。

Q. ここは海が近くて恵まれた環境ですね。

青木
そうなんです。夏なんかほとんど毎日バーベキューしてますよ、海で。。

Q. 最高のロケーション!釣りなども楽しめそうですよね。

青木
釣りだけはしないんですよ。友達はほとんどしてるんですけど。
友達がハマってる時はサッカー漬けで、時期がずれちゃったからかなぁ。。今はもっぱら調理担当です。

Q. 青木さんのこれからについてお聞かせください。

青木
自分の作品を作りたいですね、やっぱり。作りたいものはたくさんあるんです。今までなかなかその時間がとれなくて。ありがたいことにたくさんの問い合わせを頂いていたんですが、昨年末までで新規の受注は一旦ストップしている状況です。依頼だけを作り続けてきたスタイルから今まで温めてきた作りたい作品、切りたい切り絵を作っていくスタイルにしていこうと。作品を作って個展で全国、世界回りたいです。もっと多くの人に生で武蒼の切り絵を見てもらえたら嬉しいですね。

Q. 是非拝見したいです。個展の開催はあるのでしょうか。

青木
こっちに帰ってきた時に一度、串木野でも開催したんです。その時は作ってきた作品を全国のお客さんから「個展をするから一回だけ貸してください。」て言って送ってもらって。

実は次の個展も決まってます。東京なんですが、次のステージに向けて頑張りたいと思います。

Q. その際はまた取材させてください。

青木
もちろんです!

常に自然体でどの質問にも率直にありのままに答えてくださった、青木さん。

好きなことを仕事とし、地元鹿児島から全国、そして世界へと将来を見据え、まっすぐに突き進む青木さんの生き方は羨ましくもあり、素敵でした。
これからの青木さんの活躍に期待大です!

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